Tuesday, August 31, 2010

期限切れワクチン接種、15歳体調すぐれず

静岡済生会総合病院(静岡市駿河区小鹿)は27日、有効期限を約2か月過ぎた新型インフルエンザワクチンを静岡市内の15歳の男性1人に接種するミスがあったと発表した。男性は2週間後にめまいや吐き気を訴えて別の病院に入院し、現在は退院して自宅療養中だが、体調がすぐれないという。めまいなどの症状とワクチン接種との因果関係について、静岡済生会総合病院は「否定できない」としている。
 同病院によると、接種ミスがあったのは7月15日。8月18日に薬剤師が在庫を確認していた際、5月25日で期限が切れていたワクチンを接種したことに気づき、病院は今月25日になって静岡市保健所に報告するとともに、家族に謝罪した。接種ミスが起きた原因について同病院は〈1〉ワクチンを保管する冷蔵庫内で、有効期限による分別が正しく行われていなかった〈2〉接種する際も有効期限を確認しなかった――ことを挙げた。
 記者会見した石塚隆夫病院長は、「接種を受けた患者や保護者に心よりおわび申し上げる。今後、同じ過ちを繰り返さないよう管理態勢を改善し、再発防止に努める」と陳謝。ミスが確認されてから市保健所への報告と保護者への説明・謝罪まで1週間かかったことについては、「18日に病院で大規模なシステム障害が発生し、その対応に追われていた」と釈明したうえで、「実際に遅れたことは非常に申し訳ない」と述べた。(読売)

Monday, August 30, 2010

家族承諾で4例目の脳死 8月に5例、月間最多

日本臓器移植ネットワークは28日、関東甲信越地方の病院に蘇生後脳症で入院中の40代の男性が脳死と判定され、臓器提供が行われる予定だと発表した。男性は書面で提供の意思表示をしていなかったが、家族が脳死判定と提供を承諾した。
 7月に施行された改正臓器移植法に基づく「本人意思不明」の4例目。脳死移植が行われれば、1997年の移植法施行以来91例目。8月になって、書面による意思表示をしていた1例を含め5例目の提供で、同じ月に5例の提供は初。
 肺は京都大病院で30代の女性と50代の男性に片方ずつ、肝臓は分割して国立成育医療研究センターで10歳未満の女児と京都大病院で50代の男性、一方の腎臓と膵臓は九州大病院で40代の女性、もう一方の腎臓は千葉大病院で40代の男性に、小腸は東北大病院で20代の女性にそれぞれ移植される予定。心臓は医学的理由で断念した。
 移植ネットによると、法的に脳死と判定されたのは28日午後7時10分。
 改正移植法では、子どもを含め、生前に拒否していなければ家族の承諾で脳死での臓器提供ができる。(山陽)

Sunday, August 29, 2010

都、首都直下地震を想定し訓練 約4500人が参加

首都直下地震を想定し、東京都は29日、文京区などの会場で職員や警察官、自衛隊員ら約4500人が参加する総合防災訓練を行った。
 訓練は午前9時、東京湾北部を震源とする震度6以上の地震で、都内の交通網が寸断されたとのシナリオでスタート。
 文京区の白山通りでは多重衝突でトラックやバスが横転、電柱などが倒れた被災現場がセットされ、東京消防庁のレスキュー隊員らが“負傷者”を車内から救出。近くの都立高校では多数の死傷者が搬送されたとの設定で、自衛隊の医療活動や警視庁による身元確認、検視の訓練も実施する。
 都は2007年まで9月1日の「防災の日」を訓練日にしてきたが、多くの市民に見学してもらうため、08年から直前の日曜日に前倒しして総合防災訓練を行っている。(山陽)

Saturday, August 28, 2010

化粧品に「しわ」への効能 厚労省、表示容認へ

化粧品に、これまで認められていなかった「しわ」に関する効能の表示を認める方針を厚生労働省が固め、同省化粧品・医薬部外品部会に27日、示した。一般からの意見募集をした上で正式決定する。
 化粧品の効能は「肌を若返らせる」といった過剰な表現ができないよう、2000年に厚生省(当時)が「毛髪にはり、こしを与える」「芳香を与える」など使用できる55の表現を決定。「肌を整える」「皮膚を保護する」などはあるが、しわに関しては科学的根拠に乏しいとして、表現はなかった。
 この日まとまったのは「皮膚にうるおいを与え、乾燥によるしわを目立たなくする」「紫外線によるしみ、そばかす、しわを防ぐ」との二つの表現の追加。それぞれ化粧水、日焼け止めなどでの表示が想定されている。
 業界団体や、既に表示を行っている米国からの要望を受け、保湿としわの関係を示す研究結果などを参考に検討した。(山陽)

Friday, August 27, 2010

医療事故(機器誤作動で低血糖見逃す)

2007年に誤って殺虫剤を飲み、藤沢市民病院に入院していた同市の男性(当時77歳、昨年3月死亡)が治療中、低血糖による脳障害になった事故で、同病院は25日、男性の遺族と示談が成立し、計1000万円の損害賠償を支払うと発表した。
 事故は、血糖値の測定機器の誤作動が原因となったため、賠償金のうち治療費分を除く約857万円の半額は、製造元の堀場製作所(京都市)が負担する。
 病院によると、男性は07年5月に入院し、解毒剤や高カロリー液を投与され、血糖値を下げるためインスリンの注射を受けた。しかし、解毒剤の影響で測定器の血糖値が正しく表示されず、男性は低血糖になった。
 病院側は解毒剤の投与後に血液検査と測定器の示す血糖値が違うことに気づいたほか、測定器の取り扱い説明書にも誤作動の可能性が書かれていた。同製作所も病院側に口頭で注意喚起するなどの措置を取らなかったという。病院側は「男性が亡くなった原因は不明だが、測定器の誤作動が死に関係した可能性は否定できない」としている。(読売)

Thursday, August 26, 2010

原油分解の新種細菌、メキシコ湾流出で繁殖?

大量の原油が流出したメキシコ湾の海底で、原油を分解する新種の細菌が繁殖していることがわかった。
 米ローレンス・バークレー国立研究所の研究グループが発見し、24日の米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。
 今年5月25日から6月2日にかけ、メキシコ湾の深海底17か所で採取した試料から見つかった。オセアノスピリラーレスと呼ばれる細菌の仲間で、水温が5度の冷水環境でも、効率良く原油を分解しているという。
 細菌の繁殖によって海中の酸素濃度が低下する可能性もあるが、研究チームの観測では、濃度低下は確認されておらず、他の海洋生物への悪影響は心配ないとしている。(読売)

Wednesday, August 25, 2010

熱中症搬送、全国で9259人…先週

8月16~22日の1週間に熱中症で救急搬送された人は全国で9259人、死者は16人に上り、5月末からの合計は救急搬送者4万1020人、死者145人となったことが総務省消防庁の調査(速報値)でわかった。
 8月16~22日の搬送者は、梅雨明け後の7月19~25日(9901人)に次いで多く、「第2のピーク」(消防庁)を迎えている。大阪府(839人)、東京都(819人)、愛知県(614人)、埼玉県(579人)と都市部に集中している。
 8月に入っての搬送者は2万908人、死者は48人で、統計を取り始めた2008年の8月、昨年の8月を大きく上回っている。同庁は「7月に続き、今月も最悪のペース」と注意を呼びかけている。(読売)

デイサービス、宿泊もOK

厚生労働省は23日、高齢者が日中に通う、介護保険の通所介護事業所(デイサービス)について、利用時間を延長し、宿泊も可能にする方針を決めた。
 預かり機能を強化することで、高齢者を自宅介護する家族の負担を軽減するのが狙いだ。
 同日開かれた社会保障審議会介護保険部会で原案が示された。現行制度では10時間未満とされている預かり時間について、大幅に延長する。働いている家族からは、「夕方までに介護のため帰宅しなければならず、仕事との両立が難しい」との声があった。
 また、宿泊については、一部の事業者が保険外の自費サービスを導入している。これに介護保険を適用、1割負担で利用できるようにする。介護保険には一時的に高齢者が施設に入所するサービスもあるが、緊急時に利用することが難しいことから、通い慣れたデイサービスでの受け入れを容易にする。(読売)

Tuesday, August 24, 2010

交流深め、孤独死防げ 大都会の限界集落

65歳以上のお年寄りが半数を超え、将来は消滅する恐れもある限界集落。そんな過疎地の象徴が都心にもある。東京都新宿区の都営戸山団地。16棟の総戸数は約2300戸で、住民の過半数が65歳以上と見込まれる。希薄だった住民同士の交流を見直し、孤独死を防ごうとする取り組みも始まっている。
 「ここは都会の限界集落だね」。8月の昼下がり、団地を歩きながら、住民でNPO法人「人と人をつなぐ会」の本庄有由会長(72)が自嘲気味に話した。
 「戸山団地に単身で入る人は、ほとんどが60歳以上。自治会活動も数年前からできない状態だ」。本庄さんの言う通り、夏休みというのに巨大な団地のどこを歩いても、若い家族の姿は見られなかった。
 団地の一角では、野菜などを売る移動商店が開かれ、年配の女性数人が品定めをしていた。遠出ができないお年寄りも多く、週3回も開かれる。
 本庄さんは数年前、同じ棟で孤独死した78歳の男性の現場に立ち会った。身寄りはあっても疎遠だった。その年、団地から12人の孤独死が出た。
 本庄さんも妻を亡くし、子供との付き合いはない。「明日はわが身。何とかして安心できるコミュニティーにしたい」(山陽)

Monday, August 23, 2010

「処暑」なのに「猛暑」

23日は暑さが和らぐとされる「処暑」。しかし、午前中から各地で気温が上がり、正午までに東京・練馬では36・0度、大阪市でも35・2度を記録した。気象庁によると、今週中も西日本を中心に35度以上の「猛暑日」が観測される見込み。9月に入っても平年より暑い日が多いといい、厳しい残暑は当分続きそうだ。23日は午後0時44分に東京・大手町で34・9度、名古屋でも午前11時18分に34・4度となっている。
 同庁によると今週も最高気温は東京で33~35度、名古屋で33~35度、大阪で34~36度となる見通しで、全国的に平年より2、3度高い状況が続きそう。9月前半も各地で30度以上の「真夏日」が相次ぐという。8月中旬(11~20日)の西日本の平均気温は平年より2度高く、1961年の観測開始以来最高を記録。東日本も1・8度高く、過去2番目となった。今月22日までに、東京(大手町)では猛暑日が8日あり、過去2番目に多かった2001年に並んだ。名古屋は14日、大阪は23日も含めると17日あった。
 同庁の分析では、最近の猛暑は、お盆から日本列島が太平洋高気圧に覆われており、その上空にも大陸からの高気圧が張り出して、上空の気温も下がらないことなどが原因という。また、南米ペルー沖の赤道付近の海面水温が上昇するエルニーニョ現象が昨年夏から今年春まで続いた影響で、北半球で気温を押し上げていることも関係している。(読売)

Sunday, August 22, 2010

治り早い『湿潤療法』 専用ばんそうこう張るだけ

屋外活動が増える夏。露出した肌にけがを負うことも少なくない。外傷の治療は消毒して乾燥させる方法が主流だったが、最近は染み出す体液の働きを生かして、乾かさずに治す「湿潤療法」が広まってきた。(杉戸祐子)
 東京都荒川区の自営業男性(53)は二〇〇七年七月、交通事故で右足のすねにけがを負った。二日後に激痛に襲われて受診すると、患部が化膿(かのう)し皮膚の腐食が進んでいた。入院し、患部を消毒しガーゼで覆う治療を受けたが、症状は悪化。尻の肉を切除し移植する治療を勧められた。
 男性は「移植以外の方法を探す」と決め、外傷治療に湿潤療法を取り入れている「柿田医院」(杉並区)を受診した。柿田豊副院長(小児外科)から、傷口を水で洗い、密閉性が高く傷口を乾きづらくする被覆材(ばんそうこう)を張る方法を勧められた。
 「そんな簡単な方法で治るのか」と疑念も抱いたというが指導通りにすると、「数日したら突然明らかに回復し始めた。新しい皮膚が盛り上がってきた」。一カ月後にほぼ完治した。
 入院中はガーゼ交換のたびに患部についたガーゼをはがすのが「激痛だった」というが、湿潤療法では「痛みはなかった」。現在は軽い打撲程度の赤みが残っているだけだという。
 外傷治療は、従来は傷口を乾かしてかさぶたをつくる治し方が主流だった。一方、湿潤療法は傷口にしみ出す体液(滲出(しんしゅつ)液)の働きを生かす。体液には細胞の成長や再生を促す働きがある。同療法用のばんそうこうで傷口を覆うことで、体液で傷口を満たし細胞を再生させる。
 同療法に詳しい市岡滋・埼玉医科大教授(形成外科)は利点に「早く治ること」を挙げ、「傷口は慢性化させると跡が残りやすい。早く治ることはきれいに治ることにつながる」と説明する。柿田副院長も「従来の方法(乾燥)で一週間かかる傷が、三、四日で治る場合が多い。ガーゼを取り換える際などの痛みもない」と話す。
 同療法は一九六二年、英国の動物学者が研究の結果から「傷口は乾燥させるより体液を逃さないように覆った方が早く治る」と提唱したのを契機に知られるようになった。国内では現在、やけどやすり傷などの治療のほか、長期療養による床ずれの治療などに広く取り入れられている。
 正しく湿潤療法を行うには注意点がある。化膿を防ぐため、傷口を水でよく洗い、汚れや異物を取り除く。けがのケースにもよるが、消毒薬は基本的には使わないことが多い。細胞の再生などを助ける成分の働きを妨げるためだ。
 同療法用の家庭用ばんそうこうも各医薬品メーカーから発売されている。製品によっては傷口に異常があったり、はがれたり体液が漏れていない限り、数日間は使用できるという。
 ただ、ばんそうこうの張りっ放しもよくない。市岡教授は「傷口の観察を忘れずに。痛みや赤み、腫れが見られたら医師に相談して」と話す。
 同療法に適さない傷もある。市岡教授は「傷口を閉鎖するので、感染(化膿)を助長する可能性がある。動物にかまれたときや傷に異物が入り込んで取れない場合は受診した方がよい」と指摘する。
 柿田副院長も「軽いやけどや浅いすり傷はいいが、深い傷は家庭では行わず受診してほしい」とアドバイスする。感染症である水いぼ、とびひのほか、虫の毒が傷口に残る虫刺され、菌が残るにきびも同療法は悪化させる懸念がある。
(東京)

孫育て学ぶ 昔と様変わり 育児の『常識』

乳幼児の育て方の「常識」が、親世代と祖父母世代で異なり、行き違いが生じることがある。両世代が気持ち良く、自信を持って子育て、孫育てができるよう、今と昔の子育ての違いを教える講座が盛んだ。 (佐橋大)
 「昔は、離乳食の準備は生後二カ月ごろから始めました。今は六カ月ごろから始めるようになっています」。東京都台東区の日本助産師会館の一室で、講師役の助産師の説明に、なるほどとうなずく面々。日本助産師会が月に一回開いている「子育て・孫育て講座」の一こまだ。
 講座は一昨年から、奇数月と偶数月でテーマを変えて開いている。受講料は一回千円。今月六日は、母乳育児や離乳食の考え方の違いを学んだ後、赤ちゃんのタッチケアを実習した。
 娘の出産を控え、大田区から参加した五十代の女性は「母乳で育てている間は、風呂上がりに、さゆを飲ませなくてもいいの」と質問。「その必要はないですよ。母乳でいいです」。講師の説明に、女性は「私たちが育児をしたころとは違ってきていますね」と驚いた様子だった。
 同助産師会専務理事の岡本喜代子さんは「幼い子のためにという思いは、親も祖父母も同じ。ただ手法が違うために、戸惑いが生じる」と説明。昔と今で変わったことと変わらないことを確認してもらい、孫育てに自信を深めてもらうのが講座の狙いという。
 同会によると、子育てにかかわる世代間ギャップはさまざまだ。
 同会は、講座で伝えている要点や孫を預かるときの注意点などを、より多くの人に知ってもらうための手引書「おまごBOOKミニ」も作り、今月二十三日から販売する。一冊二百十円(別に送料が必要)。申し込みは、日本助産師会出版=電03(5809)3836=のホームページ(同名で検索)からできる。
 都内では昨年ごろから、区やNPOが同様の講座を開く機会が増加。今年五月に初めて企画した孫育て講座が好評だったという三重県鳥羽市は、十一月にも同じ内容の講座を開く。愛知県半田市も今月二十九日に、初孫を待つ祖父母向けの「はじめての孫育て講座」を初めて開講する。
 「健診や電話相談などで、祖父母世代からの相談が増え、関心の高まりを感じる」。こう話す半田市の担当保健師は、背景に親の共働きや、親と祖父母が近くに住むことが増え、祖父母世代が育児で頼られやすくなった状況を挙げる。
 同時に、少子化による孫の減少に伴い、孫育てに慣れる機会が減った祖父母世代の多くは、孫の扱いに戸惑いや不安を感じるようになったという。(東京)

Saturday, August 21, 2010

高齢者見守り妙案共有

厚生労働省は、市区町村が策定する「地域福祉計画」に盛り込まれた施策のうち、高齢者の孤立化防止や所在把握などに役立つ先進的事例を全国展開する方針を固めた。
 社会問題化している100歳以上の高齢者の所在不明問題の対策の一環とする狙いがある。9月中に都道府県を通じて具体的事例を集め、今年中にも市区町村に紹介する。特に優良な事例は、国の補助事業とすることも検討している。
 社会福祉法では、高齢者や障害者らが地域で充実した生活を送れるよう、各市区町村が地域福祉計画を策定するよう求めている。
 計画は市区町村が独自に定めているが、高齢者の孤独死を防ぐため、民生委員や町内会による高齢者世帯の孤立化防止や、見回り活動などの支援策を盛り込んでいる場合もある。
 例えば、秋田市の地域福祉計画では、水道メーターの検針員が検針の際、独り暮らしの高齢者宅を見回るなどの支援策を定めている。また、愛知県北名古屋市の計画には、70歳以上の独り暮らしの高齢者に安否確認などを目的として牛乳を配達する事業が盛り込まれている。
 高齢者の所在不明問題をめぐっては、根底に地域社会や家族のつながりの希薄化が指摘される一方、2009年度末現在で全国1750市区町村の51・4%に当たる900市区町村が地域福祉計画を策定していないなど、行政の対応も必ずしも十分ではない現状がある。
 厚労省は今月13日、都道府県経由で計画を策定していない自治体に早期に計画を策定するよう通知しており、先進事例の全国展開も計画策定の動機付けとしたい考えだ。団地室内人感センサー・配食サービス本人確認・高齢者を見守る取り組みは各地で行われている。
 横浜市栄区では、区内の公田町団地の高齢者宅に人感センサーを設置。12時間以上、室内で人の動きが無ければNPOスタッフが訪問し、安否を確認する。
 北海道喜茂別町は、町の公募に応じた「地域おこし協力隊」を結成。集落人口の過半数を65歳以上の高齢者が占める「限界集落」で全戸訪問を行い、高齢者の生活支援を展開している。
 長野県木島平村でも、消防団員などが、緊急時の訪問用として独り暮らしの高齢者宅の連絡先をリスト化した。石川県能美市では、希望者に配食サービスを行い、配達時に本人からサインをもらえなかった場合、業者が市へ連絡を入れる仕組みを作った。
 また、岐阜県中津川市などでは、近隣住民や民生委員らが参加し、見守りが必要な高齢者の情報を図面に明記する「支え合いマップ」を作成。香川県小豆島町では、独居高齢者宅を訪問するなどのボランティア活動をした高齢者に対し、介護保険料の割引になる点数を付与する制度を展開する。さらに、ヤクルトグループは、全国約150の自治体などから、高齢者の見守りを兼ねた飲料配達を受託している。(読売)

Friday, August 20, 2010

「家族承諾」脳死移植 すべての手術が終了

改正臓器移植法に基づき、家族の承諾だけで脳死判定された男性の臓器を移植する手術は20日朝までに、全国5か所の病院ですべて終了した。各病院によると、患者の経過はいずれも良好という。
 心臓は東京大病院で40代の男性に、肺は大阪大病院で20代男性に、肝臓は京都大病院で40代男性に、腎臓は神戸大病院で60代男性に膵臓と、もう一つの腎臓は名古屋第二赤十字病院で30代女性にそれぞれ移植された。(読売)

Thursday, August 19, 2010

ゲーリッグは「ゲーリッグ病」ではなかった?

メジャーリーグの往年の名選手ルー・ゲーリッグが発病したのは、その名をとって「ゲーリッグ病」と呼ばれる難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)ではなく、別の病気だった可能性があるとする見解を米研究者がまとめ、18日発行の米医学専門誌で発表する。
 米ボストン大学のアン・マッキー准教授らは、頭部に衝撃を受けやすいスポーツ選手や兵士などにALSと診断される人が多い点に注目。ALSと診断されて死亡したアメリカンフットボール選手2人とボクサー1人の脊髄を分析、2種類の異常なたんぱく質が蓄積しているのを見つけた。このたんぱく質が神経の働きを妨げ、全身がまひするALSと症状が似た別種の病気を引き起こしたとみられる。
 鉄人と呼ばれたゲーリッグはけがで欠場しないことで有名だったが、当時はヘルメットが普及しておらず、頭にボールが当たり意識を失ったことが何度かあった。ALSと診断されて引退し、1941年に37歳で死亡した。
 マッキー准教授は米メディアに「ゲーリッグが発症したのは、度重なる脳しんとうなどが原因となったこの病気。ALSではないだろう」と話している。
(読売)

高齢者不明、平均寿命は縮む?

「100歳以上」のお年寄りの所在不明が相次いで判明している。日本は世界でも長寿の国として知られるだけに、この問題は海外で大きな関心をもって報道され、中には長寿国という事実自体に疑問を投げかけるようなものまであった。
 果たしてこの問題によって日本人の平均寿命が短くなる可能性はあるのだろうか。
厚生労働省が先月26日に発表したデータによると、2009年の日本人の平均寿命は男性79・59歳、女性86・44歳と、いずれも4年連続で過去最高を更新した。特に、女性は25年連続で世界一の座をキープ。男性も世界5位につけている。
 この直後、「不明高齢者」問題が噴出する。
 こうした状況を受け、特に韓国では、「高齢者天国 日本のイメージに泥を塗る」(中央日報)、「日本=長寿国家は虚構?」(文化日報電子版)などと大々的に報道された。韓国では、お年寄りを敬う儒教の考え方が広く浸透していることもあり、関心を引いたようだ。
 だが、厚労省で平均寿命を取りまとめる人口動態・保健統計課の担当者は、「今回の問題は平均寿命には影響しません」と言い切る。
 そもそも、一定年齢以上の高齢者については「人口が少ないため、一人の生死が統計に大きく影響してしまう」として、平均寿命を算出するデータに含めていないのだという。何歳以上を除外するかは、年によって異なり、2009年の調査では、男性は98歳以上、女性は103歳以上はデータに含めなかった。
 同課では「これより下の世代は人口が多いため、亡くなっていたケースがかなり出てきてもほとんど影響しない」と説明している。
 また、国勢調査の結果を平均寿命を算出するための主要な資料にしているのも、今回の問題が影響しない理由の一つだという。
 総務省が5年に1度行っている国勢調査では、原則、調査員が面談し全世帯と直接接触する方法をとる。一方、今回の問題で、高齢者の消息が反映されていないケースが目立った住民基本台帳は、各自治体が、出生や死亡、転出入について住民の申請に基づき作っているものだ。
 厚労省では、住民票を現在の住所に移さないといったケースが相当数あるとみており、面接方式の国勢調査の方がより実情を反映しているとしている。
 ただ、国勢調査も未回収率が増加しており、精度が落ちないか懸念される。未回収率は1995年で0・5%だったのが、2000年で1・7%、05年は4・4%と増加の一途だ。総務省は、調査員が調査票を直接手渡す方式は変更しない一方、回答については、今年の調査から郵送も受け付けるなど、未回収率を減らす工夫を行う。(福士由佳子)(読売)

Wednesday, August 18, 2010

土着カメムシで害虫駆除

国内に広く生息するカメムシの一種「クロヒョウタンカスミカメ」を農作物の害虫駆除に利用する方法の開発に、高知大農学部の荒川良教授(天敵昆虫学)らの研究グループが取り組んでいる。
 複数の農家で行われた実証試験でも成果が証明され、農林水産省に農薬として登録を申請中。新たな「生物農薬」としての期待が高まっている。
 研究の発端は5年前、ナスやピーマンを栽培する複数の高知県内の農家から荒川教授に、「タバココナジラミ」という害虫の発生で困っているとの相談が寄せられたのがきっかけ。
 タバココナジラミの幼虫は、ナスやピーマンの葉を食い荒らすほか、農作物への感染ウイルスを媒介する恐れもある。殺虫剤に対する抵抗力が強いため、決定的な駆除法がなく、対応を迫られていた。
 荒川教授のグループも研究に乗り出したが、学生が、大学内のビニールハウスでクロヒョウタンカスミカメがタバココナジラミの幼虫や卵を捕食しているの発見。生物農薬としての活用の研究を本格化させた。
 クロヒョウタンカスミカメは体長約2ミリで、外見はアリに似ている。研究の結果、青森県以南に広く生息し、タバココナジラミのほかにもハダニやアザミウマなどの害虫を捕食することも分かった。卵から1か月ほどで成虫になり、1度に120個近く卵を産み、繁殖も容易という。
 生物農薬は、化学物質による農作物汚染の危険性がなく広く利用されているが、多くが外来種の昆虫。クロヒョウタンカスミカメは昔から日本にいるので、生態系への影響を最低限に抑えられるという長所がある。
 荒川教授は、「青森以南では、どこにでもいる虫で、安全性も高い。新たな生物農薬として広く普及させたい」と意気込んでいる。(松田俊輔)(読売)

Tuesday, August 17, 2010

医療・美容の新素材

エチゼンクラゲと、越前ガニの殻から取り出される物質に放射線の一種である電子線をあてて、新しい医療・美容用素材を合成する技術の開発に、関西電子ビーム(美浜町松原)、日華化学(福井市文京)など4社と、県立大海洋生物資源学部(小浜市学園町)のグループが着手した。
 たびたび漁業被害をもたらす“海の厄介者”と、福井を代表する味覚ながら食べた後は捨てるしかないごみを、有効利用するのが目的。早ければ2011年度末までに実用化のめどをつけたいとしている。
 利用をはかるのは、クラゲのたんぱく質の大半を占めるコラーゲンと、カニやエビの殻を構成するキチンから作られるキトサン。
 コラーゲンは保湿効果が高く、化粧品や健康食品など幅広い分野で商品化されている。キトサンも、安定した分子構造や抗菌効果といった特徴から、手術用縫合糸、衣料用繊維、健康食品などに使われている。
 グループが手掛ける新素材は、コラーゲンとキトサンの特性を併せ持ったゼリー状物質「ハイドロゲル材」。やけどやけがの患部にはり付けて早期回復を促す「創傷被覆材」、肌の栄養補給やニキビ予防といった効果を狙う「美容マスク」などへの応用をはかる。
 クラゲからコラーゲンを抽出する技術は、県立大などが既に開発。グループはこれらの技術を応用し、コラーゲンとキトサンを寒天状の化合物に混ぜた後、専用施設で電子線ビームを照射して固め、ハイドロゲル材を生成する研究を行う。
 電子線を利用すると、加熱しなくても化学反応を早く進めることができ、減菌作用もあるという。
 研究計画は、若狭湾エネルギー研究センター(敦賀市長谷)の「嶺南地域新産業創出モデル事業補助金」で今年度の基礎研究枠に採択され、1年間で200万円の助成を受けることが決まった。
 関西電子ビームの隅谷尚一専務は「どういう組成がいいのかを見極めるのが研究のポイント。地元に役立つ技術として確立できれば」と話している。(読売)

Monday, August 16, 2010

マックのおまけ規制を検討 米市

米メディアによると、米サンフランシスコ市は13日までに、ファストフード店などが高カロリーの子ども向けメニューにおもちゃのおまけを付けることを禁じる条例を制定する検討を始めた。
 米国で深刻化している子どもの肥満を減らすことが目的。同市に隣接するサンタクララ郡も同様の規制を今年、米国で初めて導入しており、さらに広がるか注目される。
 条例案は、600キロカロリーを超えるセットメニューで野菜や果物がつかない場合、おもちゃ付きの販売を禁止する。
 米国では子どもの3人に1人が肥満か太り気味とされ、対策が求められている。高カロリーの子ども向けファストフードの消費増加が一因と考えられており、米紙USAトゥデーによるとおもちゃのおまけがこうしたメニューに子どもを引きつける要因になっている。
 おもちゃ付きメニューは全米で年間10億人分以上販売されているといい、条例が成立すればマクドナルドをはじめとするファストフード店には打撃。このため同市のレストラン協会は反対している。(山陽)

Sunday, August 15, 2010

中高年は若者より水必要

猛暑の中でウオーキングする時、熱中症を防ぐには中高年は若い世代に比べて1・7倍の水分補給が必要なことが、滋賀県立大学の寄本明教授(運動生理学)の調査でわかった。
 健康のため長い距離を歩くウオーキングは中高年を中心に約4000万人が取り組むと推定され、夏も多くの大会が開かれる。水分補給の重要性は指摘されてきたが、実際にどれだけ必要かは明確ではなかった。
 寄本教授は、年代の異なる約200人を対象に、様々な温度や湿度でウオーキングした時の発汗量を測定。熱中症予防には発汗量の8割の水分補給が必要として、1時間のウオーキングに求められる水分量を計算した。
 中高年(40~79歳)は、若年(18~39歳)に比べて汗をかきやすく、35度以上の猛暑では、男性は1060ミリ・リットル、女性は890ミリ・リットル飲むことが必要だった。若年の男性の620ミリ・リットル、女性の520ミリ・リットルに比べると、約1・7倍多かった。
 寄本教授は「中高年のウオーキングは、若者のジョギングに相当するような発汗をもたらす。目安の量を何回かに分け、こまめに補給してほしい。暑さが厳しい時は運動を中止することも必要」と呼びかけている。(読売)

遺伝子ビジネス野放し、根拠不明確な例も

インターネット通販で手軽に受けられる遺伝子検査が増えている。がんやアルツハイマー病のリスクが分かるとするものや、子供の「才能」が分かるとうたうものまである。
 ただ、科学的根拠は必ずしも明確でなかったり、説明が十分でなかったりするものも多く、日本人類遺伝学会や専門医らは「利用者に大きな誤解と不安を与える恐れがある」「遺伝情報は血縁者にも影響を与える重大な個人情報。専門家のカウンセリングなしの検査は危険」と警鐘を鳴らしている。
 経済産業省の今年2月の調査では、遺伝子検査を行う業者は330あった。インターネット通販やクリニックなどで販売され、肥満のタイプや生活習慣病のリスクのほか、がんやアルツハイマー病のリスク判定をうたうものなどがある。健康食品などの販売につなげる例や、肥満や骨粗しょう症の遺伝子検査を客に受けてもらい、結果に応じてエステメニューの提案に利用するエステサロンもある。
 子供の「才能」がわかるとするものも登場。今月初め、東京都内で説明会を開いた会社は、遺伝子検査で知性、運動、芸術など6分野の「才能」がわかるという商品を販売。綿棒でほおの内側の粘膜をぬぐい取ったものを開発元の中国企業へ送り、遺伝情報を解析した結果を受け取る。知性分野なら、記憶力、理解力など6能力について、「優秀」「良好」「一般」「不利」の4段階に評価されて戻ってくる。料金は5万8000円。6月からインターネットで販売を始め、約200件の申し込みがあった。
 「世界中の論文を基にしていると聞いた。科学的根拠はあると判断している」と同社社長。一方、説明会を聞いた北里大学臨床遺伝医学講座の高田史男教授は、「説明文書を読んでも、遺伝子の機能の説明と、それが人間の潜在能力にどう影響するかという解釈に非論理的な飛躍がある」と疑問を呈する。別の会社では同じ商品を「才能占い」と名付けて販売している。
 遺伝子検査ビジネスには「科学的根拠が十分でないものや結果の解釈が確立されていないものも少なからずある」(高田教授)という。経産省は2004年、客観的データの明示や専門医らによるカウンセリング体制の整備を求める指針を作成したが、強制力はない。
 日本人類遺伝学会は00年に注意を呼びかける勧告を発表したのに続き、08年には消費者が直接買える商品について、公的機関の監督を求める見解を出しているが、規制はないのが現状だ。(読売)

笑顔なのは1日2時間です

「1日の“笑顔時間”は平均2時間」――。住友生命保険が12日発表したアンケートによると、1日のうち笑顔になっている時間を全国の男女各1000人に聞いたところ、平均118・4分だった。
 年代別では、20歳代以下が最も長い151・8分となったのに対し、40歳代は97・6分と最短で、笑顔の時間が4割近く減っていた。
 男女別では、男性の75・6分に対し、女性が倍以上長い161・1分に上った。女性の方が男性よりも1日を笑顔で過ごしているという実感を持っているようだ。
 また、「笑顔にしてくれる人は」の問いでは、全世代で「子ども」がトップで、全体の34・3%を占めた。「家族」と答えた人も14・8%に上った。(読売)

Friday, August 13, 2010

喫煙率23・9%で過去最低 15年連続減、女性は微増

日本たばこ産業(JT)が11日発表した2010年の全国たばこ喫煙者率調査によると、たばこを吸う成人の割合は、前年に比べ1・0ポイント減の23・9%となり、15年連続で過去最低を更新した。男性の喫煙率は2・3ポイント減の36・6%と19年連続で減少したが、女性は0・2ポイント増の12・1%で、わずかだが2年ぶりに上昇した。
 JTは「健康意識の高まりや、喫煙をめぐる規制強化が影響している」と指摘。10月のたばこ税増税に伴う値上げが見込まれるため、今後もたばこ離れが進みそうだ。調査は5月に実施し、2万631人から回答を得た。(山陽)

Thursday, August 12, 2010

無承認の臨床研究

名古屋大病院は11日、同病院泌尿器科の研究グループが国の承認を受けずに臨床研究をしていたと発表した。
 いずれも脂肪に含まれる幹細胞(脂肪幹細胞)を使った治療で、昨年1月から11月にかけ、計10例あった。同病院は「臨床研究に関する指針を誤って解釈していた」と釈明し、これらの事例を扱った論文1本と研究発表3件は取り下げた。
 同病院の発表によると、同グループは昨年1月から4月までに、71~83歳の男性患者5人に対し、前立腺がんの手術後の尿漏れを防ぐため、患者自身の脂肪から取り出した幹細胞を注入する治療を施した。さらに、同年7月から11月の間に、27~60歳の男性患者5人に対し、腎臓がんの手術の後遺症を抑えるため、脂肪幹細胞を注入する手術を実施した。治療の安全性に問題はないという。
 厚生労働省の指針では、ヒトの幹細胞を使って臨床研究する際は大学の倫理委員会と国による審査を義務づけているが、いずれも倫理委の承認を受けただけで国には報告していなかった。調査を担当した水野正明准教授は「今回使った幹細胞は体外で培養していないので、国の承認は必要ないと判断していた」と述べた。
 問題となった治療例のうち2例が今年3月、日本再生医療学会で発表され、指針の違反が発覚。同病院は、過去に倫理委にかかった958件をあらためて調査していた。(読売)

Wednesday, August 11, 2010

移植番組見て提供意思

改正臓器移植法に基づき、家族の承諾で初めて脳死判定された20代男性の臓器摘出は10日朝までに、すべて終了した。
 摘出された心臓と肺、肝臓、腎臓、膵臓は、男性が入院していた関東地方の病院から移植希望患者がそれぞれ待機する病院に搬送され、移植手術が順次始まった。
 一方、臓器をあっせんする日本臓器移植ネットワークは同日朝、男性が「家族で臓器移植関連のテレビ番組を観ていた際、口頭で臓器の提供意思を示していたため、家族は本人の意思を尊重した」とする家族のコメントを発表した。
 移植病院から医師らが到着したのは9日深夜。臓器摘出は10日午前7時前までに終わった。
 心臓はヘリコプターで羽田空港へ。チャーター機で伊丹空港に運ばれ、パトカーの先導で国立循環器病研究センター(大阪府)に同日午前6時36分到着し、重い心臓病の20代男性への移植手術が始まった。
 肝臓は同6時過ぎ、タクシーで東京大学病院に着き、移植手術に入った。肺は同9時過ぎに岡山大学病院に、腎臓は同8時前に群馬大学病院にそれぞれ到着し、手術が始まった。腎臓と膵臓は同9時過ぎに藤田保健衛生大学病院(愛知県)に着き、手術に入った。(読売)

Tuesday, August 10, 2010

臓器を摘出、各地で移植手術 改正移植法で初の提供

改正臓器移植法に基づき、家族の承諾で初めて脳死と判定された20代の男性が入院していた関東地方の病院で10日早朝、男性から臓器が摘出され、国立循環器病研究センター(大阪府)へ心臓が運ばれて20代の男性患者に移植手術が行われるなど、各地の病院で移植手術が進んだ。
 関東地方の病院には、移植病院から臓器摘出チームが集まり、10日午前3時14分に摘出を開始。午前5時ごろに心臓を運ぶヘリコプターが病院近くから飛び立ち、羽田空港からチャーター機を使って大阪へ。ほかの臓器を運ぶための容器を載せた車も相次いで病院を出発した。
 心臓は、午前6時半すぎに国立循環器病研究センターに到着。拡張相の肥大型心筋症の20代男性へ移植する手術を始めた。両肺は岡山大病院でびまん性汎細気管支炎の20代男性、肝臓は東京大病院でC型ウイルス性肝硬変の60代女性、一方の腎臓と膵臓は藤田保健衛生大病院(愛知県)で1型糖尿病の50代女性、もう一方の腎臓は群馬大病院で低形成腎の10代男性に、それぞれ移植。
 提供者の男性は書面による臓器提供の意思表示がなく、家族は本人から提供意思を口頭で聞いていたという。(山陽)

移植ネット理事の一問一答

厚生労働省で9日記者会見した、日本臓器移植ネットワーク理事の小中節子医療本部長の一問一答は次の通り。
 ―臓器の提供病院が明らかになっていない理由は。
 「家族の要望で、個人を特定されないよう公表を控えてほしいと言われた」
 ―提供に至る経緯は。
 「本人が家族との会話の中で『万が一のことがあったら臓器を提供してもいい』と話していた。本人の口頭による意思表示を尊重して、臓器提供することを家族の総意として決めた」
 ―臓器提供という選択肢を病院側が提示したのか。
 「把握していない」
 ―本人は脳死からの臓器提供を希望していたのか。それとも心臓死後の臓器提供を希望していたのか。
 「脳死とか心停止とか明確に言ったかどうか、把握していない」
 ―本人が臓器提供意思を持っていたとしても、脳死判定に従う意思を持っていたかどうかは確認していないということか。
 「確認していない」
 ―家族とは具体的には両親か。
 「どういう家族かは言えない。人数は数人以上。3~4人ぐらい」
 ―男性が家族に話してから翻意した可能性はないのか。
 「会話した後の本人の意思に変化がないと家族が判断されたと受け取っている」
 ―書面による意思が不明な中で、脳死下の臓器提供が行われた意義は。
 「意思不明ではなかったと考えている。過去にも本人が口頭で意思を示していたのに移植ができなかった例があった。そういう方の意思を尊重できる新しい一歩になったと認識している」(山陽)

Monday, August 09, 2010

家族の承諾だけで初の脳死・臓器移植へ

日本臓器移植ネットワークは9日、関東甲信越地方の病院に入院していた20代の男性患者が脳死と判定されたと発表した。
 家族の承諾だけで脳死判定と臓器提供ができるとした改正臓器移植法が7月17日に全面施行されて以来、初の適用例。男性は生前に書面での提供意思を示していなかったが、家族が承諾した。脳死での臓器提供は1月下旬を最後に止まっていたが、今回は改正法が施行されて約3週間後の提供申し出となった。
 男性は交通事故に遭い、同病院に搬送された。5日に診断した結果、脳全体の機能が失われた可能性が高いことが判明。主治医や移植コーディネーターの説明を受けた家族が8日夜、臓器提供を承諾した。法的脳死判定は8日午後9時半に始まり、9日午前11時55分に終了した。脳死判定した病院名、所在地などは家族の意向により、発表されていない。
 改正前の臓器移植法は、本人が臓器提供意思表示カードなどで提供意思を示すことが求められるなど、世界で最も厳しい提供条件とされていた。この結果、これまでの脳死臓器提供例は約13年間で86例にとどまっており、改正法が成立した。
 法的脳死判定は1997年の臓器移植法施行後、今回で88例目。臓器提供が今回行われれば87例目となる。
 同ネットワークによると、男性の場合、生前に口頭で両親に臓器提供の意思があると伝えていた。提供を拒否する意思表示は確認されなかったため、家族が話し合い、男性の臓器を提供することを決めたとしている。
 臓器の摘出は10日未明から開始される予定。心臓は国立循環器病研究センター(大阪府)で20代男性に、肺は岡山大病院で20代男性に提供される予定。肝臓は東京大病院で60代女性に、腎臓は群馬大病院で10代男性に、もう一つの腎臓と膵臓(すいぞう)は藤田保健衛生大病院(愛知県)で50代女性に提供される見通し。小腸は医学的理由で断念し、眼球の提供先は今後決める。(読売)

Thursday, August 05, 2010

米国の大人、4分の1肥満

米国の大人の26・7%は肥満とする調査結果を米疾病対策センター(CDC)が3日、発表した。2007年の調査に比べ1・1ポイントの増加で、CDCは「肥満は公衆衛生上の重大な脅威であり、徹底して対策に取り組む必要がある」としている。
 09年に、米国の18歳以上の40万人を対象に電話で体重と身長を聞く形式で調査。体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が30以上の人の割合が26・7%に上った。回答者は体重を実際より軽く申告している恐れもあり、肥満の割合はもっと高い可能性もあるという。
 アラバマ州やルイジアナ州など南部を中心とした9州では、肥満人口が30%を超えた。00年には30%を超えた州は一つもなかったという。人種別では黒人女性が41・9%、ヒスパニック系が30・7%と高いのが目立った。
(山陽)

Wednesday, August 04, 2010

「経済的理由で治療中断」46%

福島県保険医協会(福島市御山)が県内の医療機関を対象に行ったアンケート調査で、多くの医療機関でこの半年間、患者が経済的な理由から治療を中断したり、検査や投薬を断ったりした事例があったことが分かった。
 不況の影響が医療機関での受診に出ているとの報告を受け、同協会が5月~7月、協会に所属する病院や歯科診療所など1443施設に対して調査。25%の361施設が回答した。
 調査結果によると、このうち166施設(46%)が「患者の経済的な理由から治療を中断した事例があった」と回答。「患者から医療費負担を理由に検査や投薬を断られたことがある」としたのも159施設(44%)あった。特に糖尿病や高血圧など、長期の治療が必要な病気で中断が目立つという。
 また、患者の医療費の未払いを経験したことがある医療機関は207施設(57%)だった。
 患者の受診状況に関して気付いた点として、「支払いが滞る人が増え、家族も支払いを拒否する」「『経済的に苦しくてもう来られない』と言われた」などの意見も寄せられた。
 同協会の菅原浩哉事務局長は「今回の調査で、厳しい経済状況による患者の受診状況の深刻さが浮き彫りになった。患者が費用の心配なく受診できるような体制づくりを、国や地方自治体に今後も要望していく」と話している。(読売)

Tuesday, August 03, 2010

小麦が除草剤代わり

福井県立大生物資源学部の村井耕二教授(遺伝育種学)は29日、大豆と同時に栽培すると雑草の生育を抑制する小麦「LM12」を開発したと発表した。
 食用には適さないが、大豆栽培時に除草剤の代わりとして利用できるとしており、村井教授は「安全な大豆栽培技術として研究を続け、今後5年以内には実用化したい」としている。
 LM12は、6月中旬に大豆と同時に種をまくと、雑草が生える前に芽を出し、雑草の発生を抑制。一方で生育は遅く、草丈は20センチ程度にしかならないため、草丈約60センチになる大豆の栄養は奪わず、日光も遮らない。大豆の収穫期である9月末には枯れるので、刈り取りも不要という。
 村井教授らは、2008年4月から本格的に研究を開始。約100種類の小麦の成育実験を繰り返す中で、大豆栽培に適した品種を選び出した。
 現在は同大学福井キャンパス(永平寺町松岡兼定島)にある実験圃場のうち、約7・5平方メートルで大豆とともに栽培。来年度には、大豆の生育や品質に影響を及ぼさないかなど詳細なデータをまとめるほか、県やJAなどに協力を呼びかけ、大規模な研究栽培を行いたいとしている。
 村井教授は「生育が遅かったり、大きく育たなかったりといった食用に適さない短所を逆手に取れないかと考えた。除草剤がいらない安全な栽培技術として確立していきたい」と話していた。(読売)

Sunday, August 01, 2010

「ビタミンK与えず乳児死亡」提訴

昨年10月、山口市内で生後2か月の女児がビタミンK欠乏症となり死亡した。女児の母親(33)は、出産を担当した同市内の助産師(43)が標準予防法のビタミンK2シロップを女児に与えなかったことが死亡原因だとして、助産師を相手取った損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こした。
 第1回口頭弁論は8月4日に行われるが、この訴訟が注目されるのは、助産師がビタミンK欠乏症予防として代替療法「ホメオパシー」の錠剤を女児に与え、ビタミンK2を与えなかったとされる点だ。代替医療は現代医学には限界があるとして患者の自然治癒力に働きかける治療法の総称で、ホメオパシーはその代表的存在。約200年前に欧州で登場、治療者によっては軽い頭痛から心臓病、がんなどまで対応する。
 一方、ビタミンK欠乏症は、新生児の4000人に1人の割合で発症する。生後1か月頃に頭蓋内出血を起こして死亡する症例が多いが、ビタミンK2を生後1か月までに3回与える予防法は確立している。厚生省(当時)も1989年、投与を促す指針を策定し、10万人当たりの発症率は平均18人(78~80年)から2人(90年)まで低下した。
 しかし、投与は義務ではないため漏れもある。この助産師もビタミンK2を投与したと母子手帳に記していた。日本助産師会の岡本喜代子専務理事は「ビタミンK2投与は当然行うべき基本的な処置。助産師はホメオパシーなどの伝統医学や食事療法などを妊婦のケアに取り入れる人が多いが、極端に偏った考えの助産師がいたことを重く受け止めている」と話す。
 特にホメオパシーについては、同会支部主催で講演会が開催されたこともある。今回の助産師もホメオパシー普及団体の認定資格者の一人。予防接種などを否定する傾向の強い普及団体に関係している助産師もいて、同会の中でも懸念する声があがっていた。
 ホメオパシーで使う錠剤は、様々な成分をその分子が検出できないほど水で希釈して砂糖玉にしみ込ませたもの。それ自体有害ではないが、現代医療を受けていれば助かったはずの命が救えない恐れもある。
 今年2月には、英国議会も科学的根拠に乏しいことを理由に保険適用の中止を求める報告書を出した。唐木英明・東大名誉教授(リスク管理学)は「代替医療は『自然』『安全』といった言葉で語られるが、治療効果の検証が不十分で、医療従事者が提供すべき医療ではない」と指摘する。
 助産師主体で行う出産は全出産数の約1%に過ぎないが、現代医療が濃厚に関与する出産とは異なる選択肢として、一定の支持を得てきた。助産師など医療従事者は存在意義を失わないためにも、その姿勢が患者の命を左右することを肝に銘じるべきだ。(山口総局 橋谷信吾 科学部 片山圭子)(読売)