Sunday, May 15, 2011

積算放射線の人体への影響

これまでに浴びた放射線量の累計である「積算放射線量」が問題になる。
放射線と健康に関する日本を代表する研究機関である「放射線医学総合研究所」(千葉市)によると、積算放射線量が100ミリシーベルト(10万マイクロシーベルト)未満では、がんが引き起こされるという科学的な根拠はない。
100ミリシーベルトの被ばくで、がんで亡くなる人の割合が0・5%増えると考えられている。日本人の約30%ががんで死亡することから、仮に千人が100ミリシーベルトの被ばくを受けたとすると、がんによる死亡が300人から305人に増える計算になる。
根拠は、広島、長崎の原爆や、チェルノブイリ原発事故、核実験など過去に起きた放射性物質の拡散での疫学的な検証などが基礎になっている。
空気中に漂っている放射性物質を吸い込んで肺に取り込んだり、食べ物や飲み物から消化器系に取り込む「内部被ばく」に注意が必要だ。皮膚の傷口などから体内に入る場合もある。
放射性物質から出る放射線によって、細胞の遺伝子が傷つけられる恐れがある。細胞には遺伝子を修復する能力があるが、能力を上回る被ばくを受けると、がんが発生する可能性が出てくる。
消化器から血液中に入り、他の組織や臓器にも影響が及ぶ可能性がある。放射性ヨウ素は甲状腺に吸収されやすく、特に乳児に影響がある。福島県で検出された放射性ストロンチウムは骨に蓄積しやすいことが分かっている。
同じ放射線量でも、生殖腺(卵巣、精巣)や、血液をつくる「赤色骨髄」、肺、胃などへの影響が大きくなる。
放射線量の世界的な権威である「国際放射線防護委員会」(ICRP)がつくった基準を元にしている。ICRPの基準は疫学的なデータに加え、健康への影響と社会的コストのバランスを勘案して決められている。
基準値を超す食品を食べると、直ちに健康に影響は出ない。食品には放射性物質以外にも、残留農薬や添加物など多様なリスクがある。これらを総合的に考えて対応していく必要もありそうだ。(過去の新聞記事から)

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