Sunday, April 24, 2011

[惨事ストレス]被災地で活動後、心身不調

東日本大震災が発生して1か月が過ぎた。被災地では、様々なボランティア活動に励む人たちも数多くいるが、見聞きした悲惨な体験に思い悩み、被災地を離れた後に心身の不調を訴える場合がある。(利根川昌紀)
団体職員の財部憲治さん(23)は3月、宮城県気仙沼市にボランティア活動に赴いた。現地では、インターネット上に避難所の場所を示す地図を作ったり、避難所に食品や衣類などの物資を届けたりする活動を行った。
 避難所では、地元の人たちから津波からいかにして助かったかという話を聞いた。だが、寝たきりのおばあさんに「ごめん」と言い残し、家を飛び出したという親戚の話をする人もいた。
 財部さんは1週間活動し、自宅のある都内に戻った。だが、その後、津波の犠牲になったおばあさんの話が頭から離れず、眠れない日が続いた。
 「生き残った親族は、この思いを一生背負って生きていかなければならないのかと考えると、気持ちが重くなりました」
 財部さんは、高校時代の友人にこの話をした。すると、少し気持ちが落ち着いた。「自分一人で抱え込んでいた体験を友人と共有することで、気が楽になったのかもしれません」
 災害時の応急手当ての講習会を開くNPO法人「日本ファーストエイドソサェティ」代表の岡野谷純さんは、「被災地で悲惨な出来事を見聞きすると、精神的なショックを受けたり、もっと活動できたのではと自分を責めてしまったりし、眠れなくなったりやる気を失ったりしてしまうことがあります」と話す。
 こうした状況は「惨事ストレス」と呼ばれる。岡野谷さんは「ボランティア活動に行こうと考えている人は、惨事ストレスが起こる可能性があることを前もって理解してほしい」と訴える。
 惨事ストレスにはどう対処したらいいのか。筑波大人間総合科学研究科教授(社会心理学)の松井豊さんによると、
(1)体を休める
(2)家族や仲間と一緒に過ごすようにする
(3)被災地での体験を人に話す
――ことが大切だという。
 松井さんは「体の疲れを取ったり、家族や仲間に自分がしたつらい経験を理解してもらったりすることで、心身の緊張や不安感を和らげることができます」と説明する。
 通常、惨事ストレスは被災地から戻った直後に強く、その後は時間とともに減っていく。だが、いつまでも症状が続いたり、1年近くたってから突然つらかった経験を思い出したりする場合もある。
 そうした場合は、精神科医や臨床心理士といった専門家によるケアが必要だ。
 松井さんは「惨事ストレスが起こることは異常なことではありません。ただ、いつまでも1人で悩んでいると重症化してしまうので、医師に相談するなど早めに対処することが重要です」と話している。(読売)

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