血中のコレステロールが高いと動脈硬化や心筋梗塞を起こしやすいということが、長年言われて来たが、最近コレステロールは少しくらい高くても特に心配いらない、血中のコレステロールが高くても長生きするという日本脂質栄養学会の発表などがあって、目下日本では混乱状態になりかかっている。
一方、コレステロールは悪玉コレステロール(低比重コレステロール)(LDL)と高比重コレステロール(HDL)とがあって、前者を悪玉コレステロール、後者を善玉コレステロールと呼び、悪玉コレステロールは「140以下」、善玉コレステロールは「40から99」が適切と言われてきた。一方、悪玉、善玉コレステロールと区別されずに、とにかく血中総コレステロールが高いのは良くないという考えが日本でも長年通ってきたので、食事の中でコレステロールの多い動物性の脂肪は控えた方がよいという考えが強かったのです。
一般にコレステロールというのは、体によくないと考えられたのは誤りで、コレステロールは人間の細胞膜を作る成分として大切な役割を果たしているのです。
人間に必要な主要な栄養素には三つあり、糖質(または炭水化物)、たんぱく質と脂質に分類されます。
この脂質は、食事から摂られるものは1日0.3gに対して、肝臓で合成されるコレステロールは1日1.5g ~ 2.0gもあります。
肝臓の働きが低下する病気(すなわち肝硬変や肝癌)では、この肝臓内のコレステロールに合成が低下します。
健診を受けて総コレステロールが高いと医師から言われると、一般の人は食事の中で脂肪を摂りすぎているのかと思いがちですが、実際は甲状腺のホルモン分泌低下の場合には血中コレステロールは非常に高くなります。
だから、健診では甲状腺ホルモンの検査が必要ですが、一番簡単な健診では、体重、血圧、検尿、腹囲、胸部X線写真、血中コレステロール値の測定で終わることが多いのです。
ここで皆さんにお知らせしたいことは、健診でコレステロールが非常に高いという人は、ただ食事中のバターや、肉の脂肪の多い洋食が多いと考えてしまわないで、甲状腺ホルモンの分泌低下があることを考えてほしいのです。この甲状腺のホルモンの異常は男女ともに起こるのですが、一般には女性に多いのです。聖路加国際病院 日野原重明先生(読売)