春は新入学や就職など人生の節目も多く、希望に満ちた時期。一方で「だるい」「疲れやすい」などの体調不良に襲われやすい季節でもある。日々の気温の変動が大きい上、環境の変化に伴うストレスなどによって「自律神経」の働きが悪くなるためだ。メカニズムや対処法を確認した。
三月、東京都渋谷区の心療内科・精神科「初台関谷クリニック」を会社員女性(24)が訪れ、「だるい」「食欲がなく、仕事に行く元気が出ない」と訴えた。女性は地域の内科診療所から紹介されて訪れた。
自律神経の疾患に詳しい関谷透院長は内科的な異常がないことなどから「自律神経失調症」と診断し、軽い抗不安薬を処方した。服薬などで女性は回復傾向という。関谷院長によると、三~四月には同様に、自律神経の不調が原因の体調不良を訴える患者が増えるという。
自律神経は内臓や血管など全身に分布し、気温の変化や精神的なストレスなどの刺激の中で体内の状態を一定に保つ役割をする。自律神経失調症は、体のあらゆる部位に不調が表れる。ただ、不調は基本的には不定愁訴で、同失調症とはっきり診断されないケースも多い。
自律神経は、体をバランス良く機能させるため「交感神経」と「副交感神経」という二つの神経が相反する働き=イラスト左=をする。日中は主に交感神経が優位となり活動的に、夜間は体を休ませるため副交感神経が優位となり、毎日の体のリズムをつくる。また夏は副交感神経、冬は交感神経が優位に働いている。
自律神経の不調は、この二つの神経が優位に働く場面で優位にならないなど、“切り替え”がうまくいかなくなった状態だ。関谷院長は「初夏のように気温が上がった翌日に真冬並みに冷え込むなど春は気温差が大きく、体の調節機能が追いつかなくなる」と説明。「季節の変わり目でも、秋は体が防御態勢に入るので体調は崩れにくい。春はガードを徐々にほぐしていくのが難しい」と春に不調になりやすい理由を話す。
春は新入学や就職など新しい環境に身を置くことも多いが、それに伴う緊張も自律神経のバランスを崩す原因になる場合がある。特にホルモンバランスの影響もある女性に多く、性格的には、きまじめ▽心配性▽思い悩みやすい▽ストレス発散が苦手-などのタイプが崩しやすい。
不調を感じたときの対処法を関谷院長は「誰にも起こり得る不調で、自然と治ることも多い」と助言し、腹式呼吸によるリラックスや、体を元気づけるカルシウムやビタミンC、B1の摂取を勧める。
また「リズムのある生活が大切」とも呼び掛ける。だるい場合はついゴロゴロしがちだが、昼間に寝続けることで自律神経のリズムが乱れることもある。
軽い不調なら家族や友人と話したり体を動かすなど、積極的に過ごすことで元気が戻る場合も多いそうだ。不調が続くときは迷わず精神科や心療内科を受診することが大切だ。(東京)