新米が出回る季節になった。コシヒカリなど既存の銘柄もさることながら、近年続々登場している新品種にも注目したい。各品種の魅力と開発の背景とは-。 (安食美智子)
「とても甘くて、おいしかった」
今月十一日、東京都千代田区のごはんミュージアムで開かれた「ちばの新米フェア」。訪れた浜松市の会社員宮内活弘さん(58)は試食で新米をほおばった。
大田区の元村静子さん(75)も「太巻きすしはさっぱりしておいしい。千葉県産の新米を買ったばかりで、食べるのが楽しみ」と顔をほころばせた。
新米の産地では収穫が本格化している。今回注目したいのは、新たに一般販売された銘柄や企画米だ。
北海道の「ゆめぴりか」は高級ブランド米だ。「実力より低く評価されることが多かった」(ホクレン)北海道米の“エース”として期待されている。米はアミロース(でんぷんの一種)が適度に低く、粘りと甘みが特徴だ。昨年登場したが、収穫量が少なく、本格的なデビューは今年からだ。
「五つ星お米マイスター」で、目黒区の米穀店スズノブを営む西島豊造さんは「いわば北海道で生まれた“コシヒカリ”。間違いなく東北の産地を脅かす存在。万人受けする味で、甘さや粘りがよい」と絶賛する。
今年デビューする山形県の「つや姫」は十年の開発期間を経て生まれたコシヒカリ系のブランド米。庄内など県内四地区の栽培条件の良い平地で作られている。その名の通り、つやと白さが際立ち、甘い。
庄内は約百年前、コシヒカリやササニシキなど、ブランド米のルーツとされる稲「亀ノ尾」が生まれた土地でもある。山形県農林水産部は「輝かしい伝統の地。米どころとしての評価を高めたい」と意気込む。
既存の品種を産地の戦略により、おいしく生み出す企画米もある。昨年登場した「土佐天空の郷(さと)」は、独特の棚田を持ち、昼夜の寒暖差が大きいなど、米作りに適した高知県本山町で生まれた。深刻化する後継者不足を受け、町おこしのために企画された。
既存品種の「ヒノヒカリ」「にこまる」を使用し、“西の魚沼産”の異名を持つ。粒が大きく、「ふっくらしていて、おにぎりやお弁当など、冷めてもおいしい」(同町農業公社の和田耕一さん)。室戸海洋深層水のにがりを散布し、甘みやうま味を引き出した。和田さんは「産地を守り、未来の展望を開きたい」と意欲を見せる。
このほか、佐賀県「さがびより」のほか、秋田県は「ゆめおばこ」と低アミロース米の「淡雪こまち」、長野県の「天竜乙女」、愛知県の「ゆめまつり」がある。ゆめおばこ、天竜乙女、ゆめまつりは今年がデビューだ。
新品種が登場する背景について、西島さんは「温暖化によって、コシヒカリやササニシキなど、旧品種が作れなくなってきた。米の消費量が低下する中、消費者の嗜好(しこう)の多様化に応えるニーズが生まれた」と説明。「十年以上前から研究が始まり、近年になって、その成果が続々と出てきた」と話している。(東京)