転ばぬ先の帽子を
高齢者に多い転倒事故の際、簡単な帽子をかぶっているだけで、頭への衝撃を半減できることが、東京都新宿区戸山にある「鈴木医院」の神経内科専門医、木原幹洋医師(57)の実験で分かった。「外出時はもちろん、室内や就寝中もかぶってほしい」と話す木原医師は、二十日の「敬老の日」を前に、高齢者への啓発を東京帽子協会(台東区浅草橋)に提言した。 (榎本哲也)
鈴木医院は、高齢化率が44・54%と極めて高い都営戸山ハイツのすぐ近く。木原医師は日々、高齢者を診察する中で、転倒により脳出血や硬膜外・硬膜下出血、外傷性てんかんなどになる患者の多さを感じていたという。
「畳が減り、フローリングやベッドが増えたのも一因。お年寄りは反射神経が低下して転倒しやすく、骨粗鬆(こつそしょう)症などで頭の骨が弱い人も多く、重傷を負いやすい。トイレや風呂でタイル壁にぶつけるなど小さな衝撃も、繰り返されると認知症の原因となる」
転倒事故から頭を守るには医療用ヘッドギアが有効だが、高価な上、日常生活でかぶるのは非現実的だ。
木原医師は今春、マネキン人形の頭に打撲を加えた場合、ヘッドギアと、市販の毛糸の帽子とで衝撃の違いをセンサーで測定。強度、中度、軽度の三通りで実験した結果、いずれもヘッドギアなら80~88%減らせる衝撃が、帽子でも50~58%軽減できたという。
「トイレや寝室では事故が多い。『室内では失礼』と思わず、薄い帽子でよいので、いつもかぶっていて」と木原医師。こうした提言を、関東地方の帽子店など関係百二十一社でつくる東京帽子協会に伝え、啓発を求めた。
同協会は、「敬老の日の贈り物に帽子を」とのキャンペーンを展開。今月中に台東区内の五つの特別養護老人ホームに帽子約三百個を贈呈する。
協会加盟店の浅草・新仲見世の「トラヤ帽子店」浅草店は高齢者向けの一つとして、同店オリジナルの新作「エクセーヌ」のアルペン型をあげ、来店客に勧める。小櫃辰男店長(57)は「形崩れしにくく、丸めることもでき、手洗い可能。健康とファッションのためにいかがですか」と話していた。(東京) Tweet

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