急な介護 家族で備えを
初めての介護をするにあたり、何から手をつければいいかわからず、戸惑う人は少なくない。まず、地域包括支援センターに相談し、地域にある介護サービスの情報収集をしたい。また、介護が必要な家族の現状を把握し、家族の役割分担を話し合うことが大切だ。
都内在住の主婦(67)は、昨年末、一緒に住む母親(92)が急にベッドから立ち上がれなくなったため、母親を介護することになった。「母はひざの痛みがあったのですが、通院もしていたし、食事も排せつも身の回りのことは全部自分でできていたので、私はショックでパニックになってしまいました」と主婦は振り返る。
いつか介護が必要になることはわかっていたが、特別な準備はしておらず、慌てて紙おむつを買いに走ったという。
家族だけでは介護できないと考え、すぐに地域包括支援センターに相談に行き、介護保険サービスの利用申請をした。
地域包括支援センターは、介護など高齢者の生活に関する相談を受け付けている。2006年から全国の市町村が設置している。介護サービスを利用するまでの手順や、地域で介護サービスを提供している事業者の一覧など、介護保険に関連する情報が得られる。また、紙おむつの助成金や配食サービスなど、地元の自治体や地域の民間団体が実施している高齢者向けサービスの情報も入手できる。
民間の介護相談機関「三井不動産 ケアデザインプラザ」の介護コンサルタント、川上由里子さんは、「介護の内容や必要性を考えるためにも、普段から家族の様子を観察し、書き留めておくことが大切です」と助言する。
「最近外出をしなくなった」「食事を自分で作らなくなった」など、「あれっと思ったら、改めて普段の様子をよく観察しましょう」。生活習慣のほか、体調がいいときの体重や血圧などを把握しておくと、生活や体調の変化が生じたときの目安になる。通院歴や服用している薬の種類なども確認しておく。ノートに記録しておくと、いざというとき便利だ。
もう一つ重要なのが、家族間での態勢作りだ。「食事や排せつの介助など直接的なケアのほか、費用負担や情報収集など様々な役割があります。中心となる人を決め、家族の間で役割分担を決めておくと、速やかな対応ができます」と川上さん。
骨折や脳血管疾患などで入院し、退院後の生活で介護が必要になる場合は、「どこで暮らすか」が重要な検討課題となる。都内のある地域包括支援センターでは「できれば、施設介護か在宅かという大きな方針について、家族の意見をまとめておいてほしい」と話す。それにより、利用するサービスや検討事項が異なってくるためだ。
退院後、家で介護をする場合、入院中に要介護認定の申請を行い、認定の調査を済ませておくといい。必要な福祉用具を家庭に用意できるなど、退院後の生活がスムーズに運ぶからだ。
川上さんは「介護が必要になる前に、介護サービスを利用する場合の全体の流れを知っておくと、対応しやすいでしょう」と話している。
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