Sunday, June 20, 2010

劣等感のはけ口

「かわいいので抱っこさせて」という乳児を持つ母親への誘い文句。栃木県足利市内の子ども用品店で起きた連続乳児骨折事件は、善意の仮面の裏に潜む心の闇を浮き彫りにした。
 傷害容疑で再逮捕された五月女裕子被告(28)の心理状態はどんなものだったのか。口のきけない乳児を狙う一連の犯行に、子を持つ母親の間で不安が広がっている。
 これまでの県警の調べに対し、「幸せそうな親子がねたましかった」「離婚して苦労している」「弟と比べて学歴で劣っている」など、五月女被告が口にした言葉は劣等感を象徴するものが多いという。県警はそうした劣等感のはけ口が乳児に向けられた可能性があるとみて、引き続き五月女被告を追及している。
 犯罪心理学が専門の森武夫・専修大名誉教授は今回の事件について「嫉妬心やコンプレックスが他人の子どもに向けられた事例と考えられる」と分析する。更に「コンプレックスが解消されない限り、同様の事件を発作的に起こしてしまう恐れがある」と指摘している。
 ◆広がるうわさ・地域に不安◆
 5月末までに、足利署には他人の乳児を抱っこしたがる不審な女に関する相談が相次ぎ、十数件に上っている。足利市内の子育てコミュニティーや主婦の間では春頃から「赤ちゃんをつねる女がいる」といったうわさが広まり、五月女被告の逮捕後も、不安感がぬぐえないでいる。
 事件のあった子ども用品店によく来店するという足利市の主婦(22)は「何件も同じ様な事件があって怖い。2歳の息子とは、一緒にいて目を離さないよう心がけている」と話す。1歳の長女を持つ宇都宮市の主婦(26)は「赤ちゃんをかわいがる善意と思える行為が、犯行の前触れだったなんて信じられない」と複雑な表情を浮かべていた。(吉田祐也、木引美穂、岡本朋樹)(読売)

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