異常気象が人口減らす?
厚生労働省によると、昨年の人口動態統計年間推計で、死亡数が出生数を上回る「自然減」が12万3000人となり、統計を取り始めた1899年以来、初めて10万人を突破した。
死亡数が大幅に増加したためだが、その背景には異常気象があったのだという。日々の天気と人口の自然減との間に、どんな因果関係があるのだろうか。
日本では2005年に初めて死亡数が出生数を上回る「人口減社会」に突入した。少子化が主な要因で、終戦直後、年270万人近かった出生数は、昨年は107万1000人まで減った。2020年代には70万人台となることが予測され、高齢化も進むことから、今後も人口の自然減は続いていく見込みだ。
さらに、昨年の場合、出生数は前年比1000人増の107万1000人だったのに対し、死亡数が同5万2000人も増えて119万4000人と、戦後最多を更新し、自然減に拍車をかけた。厚労省によると、ここに昨夏の記録的猛暑が影響しているという。
死亡数の約8割は高齢者(65歳以上)が占めている。例年、死亡数は冬場に多く、夏場は比較的少ない傾向にあるが、昨年は、7月の死亡数(速報値)が前年同月比約8000人増の約9万6000人、8月は同7000人増の約9万7000人と、夏場の増加幅が突出していた。
気象庁によると、昨年は観測史上最も暑い夏だったといい、ヒートアイランド現象の影響を受けにくい全国17地点の記録を見ても、記録がある過去113年間で、6~8月の気温が最も高かった。熱中症患者も続出し、総務省消防庁によると、7~9月に救急搬送された人は約5万4000人で前年同期の4倍で、その半数近くが高齢者だった。
各自治体では高齢者の熱中症対策に追われた。東京都新宿区の大久保高齢者総合相談センター相談員の渡辺光亮さんは「連絡が取れなくなったお年寄りの自宅を訪問すると、脱水症状を起こし、すでに亡くなっていた方もいた。こんなことは近年なかった」と振り返る。
ただ死者が増えたのは夏だけではない。月別の死亡数を見ると、4、5月も前年より4500~5000人増えている。気象庁によると、この時期は、全国的に気温の変動が大きく、4月中旬には東日本の広い範囲で季節はずれの降雪を観測するなど、空模様は不安定だった。
厚労省人口動態・保健統計課は「猛暑の影響に加えて、春から夏にかけて、寒暖の差が激しかったことも、高齢者の健康には負担をかけたようだ」と分析。猛暑に限らず、不順な天候はお年寄りを中心に人の健康をむしばみ、昨年の人口の動向に少なからず影響を与えていた。(小泉朋子)(読売) Tweet

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