増え続ける川崎病原因不明
主に乳幼児がかかり、高熱が出る川崎病の患者が2005年から4年連続で1万人を突破、年々増えていることが、全国調査で明らかになった。川崎病が初めて報告されてから42年。治療法は見つかり死亡率は激減したが、原因は分からないまま。成人になってからの動脈硬化のリスクの解明なども課題となっている。
1967年に病気を初めて報告。その名がつけられた小児科医で、NPO法人日本川崎病研究センター(東京都千代田区)所長の川崎富作さん(84)は、市民公開講座で「原因が分からないから予防もできず、自然と患者が増えている」と危惧(きぐ)した。
名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区)の岩佐充二第一小児科部長によると、心臓だけでなく、全身の血管が炎症を起こして熱が出るため「全心臓炎」とも呼ばれ、心臓そのものも赤くなる。
症状として、高熱が5日以上続く▽両手が赤く腫れて、指先の皮がむける▽唇が真っ赤になり、舌がイチゴのように赤くブツブツしていて、のども赤い▽体中に赤い斑点が出る▽両目が赤い▽首のリンパ節が腫れる-の6項目のうち、5項目以上当てはまれば、川崎病と診断される。
川崎病が発見された当初、死亡率は2%ともいわれていた。「ガンマグロブリン」と呼ばれる血液製剤を点滴で一日かけて静脈から入れていく治療法が全国的に広まり、死亡率は激減。2007、08両年での死亡者は6人だった。
川崎病で一番問題となるのは、心臓の冠動脈が拡張したり「冠動脈瘤(りゅう)」と呼ばれるこぶのような膨らみができたりする後遺症。患者の約10%にみられる。冠動脈は大動脈から右側に1本、左側に2本に分かれ、心臓の筋肉が働くための栄養や酸素を送る役割を果たす。大動脈から出てすぐのところにこぶができやすい。
そこで、全身の炎症を抑え、熱を速やかに下げて後遺症を防ぐのが、ガンマグロブリン治療の目的。熱が下がっても、発熱後10日前後はこぶがないかどうか、警戒が必要になる。こぶの膨らみが内径4ミリ以内ならば経過観察で様子を見る。しかし8ミリ以上の大きなこぶ(巨大瘤)だと、内部に血液の塊ができたり、近くの血管が狭くなって血液が流れにくくなったりといった障害を招く。
ガンマグロブリンが効かない場合に、生物学的製剤やステロイドを使うのかなど、統一した治療法がなく、世界的にも研究が行われている。
後遺症が出た場合は、血管を詰まらせないようにする薬を服用したり、心臓エコーなどの定期的な検査が必要。状態によってはカテーテル治療やバイパス手術といった外科的な治療も行う。
発症後1カ月以内の急性期に後遺症などの問題がなければ、小学校までは経過観察し、その時点で問題がなければ検査も必要がなくなる。
ただし、岩佐部長は「乳幼児期に川崎病にかかった人が成人期の動脈硬化などのリスクが高くなるかはまだ分かっていない。今後は小児科医と循環器内科医の連携も必要になってくる」と話している。
自治医大公衆衛生学教室など(栃木県)が行っている全国調査によると1982年と86年の2回、全国的な流行があった。年々、増え続け、ここ4年連続で1万人を超えている。08年は1万1756人を数え、4歳以下の乳幼児10万人当たりの患者発生数は、218.6人と過去最高となった。患者は3歳未満が約7割を占める。(東京) Tweet

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