Thursday, October 22, 2009

眠気を催す市販の風邪薬

「ずいぶんスピードが落ちているな」。昨年1月、雪の降りしきる霊峰・月山を越えて山形市へ向かう国道のトンネル内。酒田市を出発した庄内交通の高速バスに乗っていた山形大助教の池田和生さん(33)は、運転席をのぞきこんだ。
 運転手は半ば目をつぶり、口は半開き。大声で呼んでも反応がない。「生きているのか。病気か」。池田さんが状態を見ている間、居合わせた県職員の高石知さん(28)がハンドルを切り、縁石にタイヤをこすってバスを停車させた。乗客20人余りが惨事を免れた。
 停車後、ようやく目を覚ました運転手は、その朝、風邪気味で薬を飲んだことを明かし、謝罪した。風邪薬との因果関係は明確にされなかったが、今年6月、運転手は道交法違反の疑いで書類送検された。
 関係者によると、運転手が飲んだのは市販の風邪薬で、抗ヒスタミン薬「クロルフェニラミン」が含まれていた。眠気の副作用があり、1回の服用より少ない程度の量(2ミリ・グラム)でも日本酒1合余りと同じくらいの集中力低下が起こるとされる。ベンザ、ジキニンなど市販の風邪薬に広く使われている。
 抗ヒスタミン薬は、神経伝達物質「ヒスタミン」の作用を抑え、くしゃみや鼻水などを鎮める反面、脳内に作用すると、眠気や集中力低下を起こす。医師の処方する医療用医薬品では、眠気が起きにくい新しいタイプが使われているが、市販薬では眠気を起こす古いタイプが主流だ。
 薬理学が専門の東北大教授、谷内一彦さんは「抗ヒスタミン薬の副作用による交通事故は、原因が究明されていないだけで、実際は各地で起きているはず。怖いのは眠気だけでなく、本人も気付かないような運動能力などの低下が起きることです」と話す。谷内さんらの研究で、古いタイプの抗ヒスタミン薬を飲んだドライバーは、眠気の自覚はなくてもハンドルには、ぶれが出ることがわかった。
 米国では7割以上の州が、眠気を催す抗ヒスタミン薬を飲んだ人の運転を法律で禁じている。一方、日本では法的な規制はなく、抗ヒスタミン薬による能力低下について、8割の使用者が知らないという調査データもある。谷内さんは「日本では、市販の抗ヒスタミン薬の副作用に対する認識が希薄で、危険性の意識も不十分だ」と注意を呼びかけている。
 眠気を催す抗ヒスタミン成分と市販の風邪薬の例
 【クロルフェニラミン】:製品例 エスタックイブ、コルゲンコーワ、コンタック、ジキニン、プレコール、ベンザブロック
 【カルビノキサミン】:製品例 パブロン、【クレマスチン】:製品例 新ルル
 (いずれも眠気のほか、口の渇きやだるさなどの副作用もある。飲酒するとさらに強くなる)(読売)

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