Friday, October 09, 2009

やけど後遺症 移植で回復

東京都の女性(32)は1歳の時、熱く沸き過ぎたお風呂の湯船に落ち、顔と手、ひざから下を除く、全身の約80%にやけどを負った。救急治療で一命は取り留めたが、皮膚にはやけどの跡が残った。
 それからは毎年のように、比較的やけどの浅い部分の皮膚を取って、強くただれた部分に移植する手術を受けた。だが、何度受けても、元のようなすべすべの皮膚に戻るわけではない。全身麻酔による手術も子供心に怖かった。12歳の時、自分の意思でそれ以上、手術を受けることをやめた。
 成長して体は大きくなっても、やけどで硬くなった皮膚は伸びにくい。おなかの皮膚が引っ張られて、いつもぴりぴりと痛み、姿勢も前かがみになった。脇腹の縮みのせいで、左腕も上がらない。やけどが深い部分は縮み方がひどいため、皮膚がへこんで、ひきつれになった。
 30歳の時、もう一度手術を受けようと決心。やけど治療に実績のある聖マリアンナ医大病院(川崎市宮前区)形成外科教授の熊谷憲夫さんを受診した。
 まず、最もひどいおなかの縮みを治療。やけどで縮んだ皮膚を切って広げ、足りない部分には牛のたんぱく質でできた人工真皮を縫いつけた。太ももの皮膚を約15センチ四方、0・4~0・5ミリの薄さで削って保存しておき、人工真皮が定着した2週間後、皮膚を網目状に切って約4倍に広げ、その上に移植した。
 半年後、左のわきを切って同じ方法で皮膚を広げ、さらに半年後、両足の太ももの内側に線状にできたひきつれを切って平らに縫い直した。
 治療のおかげで、前かがみの姿勢を取ることもなくなり、左腕も上がるようになった。やけどの跡が消えたわけではないが、「皮膚の突っ張りがなくなり、日常生活がとても楽になりました」と女性は話す。
 やけどや傷跡の治療は、範囲が小さければ、切って縫い直すことで目立たなくなることも多い。また、この女性が受けたような皮膚移植のほか、皮膚に筋肉や脂肪の一部を付けて移植する方法もある。やけどや傷跡が皮膚のごく表面だけなら、自分の皮膚をわずかに取り、培養で増やしたうえで移植する方法も同大では多用されている。
 熊谷さんは「傷の深さや範囲、場所によって様々な方法がある。時間がたっても対処可能な場合も多い。一度、専門医に相談してみてほしい」と話す。(館林牧子)(読売)

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